セカンドオピニオン(1)
12月 27th, 2009 by admin
2007年12月に医大前メンタルクリニックを開始してから、はや2年が経過した。私の最初の予想としては、世の中にこれだけお話にならない心療内科クリニックや心療内科医師が横行している現状からして、私のクリニックは、先客万来の行列ができるクリニックになるのではないかと思ったが、期待は大きく裏切られ、来院患者数はやっと110人を少し超えたところである。
初診患者さんのほとんどは、前医がいる。その紹介状や処方を見て、「OK、これはいい」と思うことはほとんどない。いかに世の心療内科医というもののレベルが低いか、唖然とするばかりである。ごく単純な、初期のうつ病患者に、SSRI以下の複数の薬が無秩序に使われている。ほとんどは簡単な抗不安薬で、アッという間に治ってしまうものを、わざわざ強い薬の依存にしてしまう。パキシル、ジェイゾロフト等の依存で苦労している患者さんを見るにつけ、なぜ最初の段階でもう少し抑制的な投薬ができなかったかと思うが、現在全世界的に通用している処方指針が間違っているのだから、それを否定するのも大きなエネルギーを必要とするのだろう。しかし、この手の薬がいかに有害無益であるかは、ちょっとした観察力があれば、すぐに分かることである。
しかし、心療内科の劣化は、こうしたレベルをはるかに超えている。私が見ている、ある年配の男性患者さんが、最近、30歳代の息子を連れてやって来た。話を聞くと、この息子さんは3月末に仕事をやめた。次の仕事も決まっていたが、自分には向かないと思って、辞退した。6月にある近くの心療内科を受診した。主訴は高校のころから犬の声など音が気になり、落ちつかないというものであった。幻聴はなかった。すると、この医師は直ちに統合失調症の疑いの診断を下し、ルーラン(4)1錠、ロヒプノール(1)1錠を処方した。さて、その後来院の3日前、患者さんは車で実家に来たとき、フラフラして、車をぶつけた。そして、救急車で問題のクリニックに行ったが、何を言っているか分からない状態だった。そこで、クリニックは近くの病院に入院の予約をした。それから、3日間、彼は実家で様子を見られていたが、ついにたまらず、私のところに連れられて来たのである。
さて、まず、この患者さんはじっとしていられない、5分と坐っていられない、昨日はそのため、一睡もしていないと訴えていた。私にはことの真相は明らかだった。この最後の症状は抗精神病薬の副作用として有名なakathisia(静座不能)の可能性が高い。つまり、この症状を作り出したのは、医者の出したルーラン(4)である。したがって、私の真っ先にやったことは、ルーランの拮抗薬、アキネトン5mgの筋注である。また、幻聴もないのに、音が気になるというだけで、いきなり統合失調症に飛躍するというのも、行き過ぎである。こうして何もかも自分で作り出しておいて、精神病院に不必要な入院をさせようというのだから、患者さんはたまったものではない。私は少なくとも今の段階で、統合失調症と断定はできないこと、すべての症状はルーランのような不適切な薬を使ったことによる副作用であること、したがって、入院は必要ないことを話し、少し強めの睡眠薬を出して、診療を打ち切った。はたして、この患者さんは、その後、見る見る安定していった。現在では、あれほど気になった犬の声も全く気にならない。
さて、こんな風にして、たった一人の医師の、あまりにも低次元の誤りや見識のなさが、いとも簡単にわれわれを破滅に導いて行くのが心療内科の世界である。